ガタガタと先輩が運転する自転車に乗りながら、私は目に溜まる涙を拭った。
「先輩…」
「ん?」
「先輩…大学は…」
「うん。県外の大学。経済学部だよ」
「…県外……。頑張ってくださいね…」
「うん。ありがとう」
私は先輩に見えないのに、思い切り無理して笑顔を作った。
それから会話が途切れて、私は目を瞑って訪れようとしている春の匂いを嗅いでいた。
そこへ、フワッと先輩の匂いが鼻を掠めた。
先輩は香水が嫌いだから、柔軟剤の匂いかな?
……いい匂い…
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