「人殺し」


私に向けられる冷たい言葉と冷たい視線。

神様って不公平だ。
たまには幸を送り込んでくれてもいいのに。


「おい」


人間ってつまらない。
どいつもこいつもバカばっかり。

人を傷つけて、優越感に浸る。

それが人間。

私も同じ人種だけど、貴方達とは違う。
だって、私は貴方達が言うように人殺しだもん。


「おい!」


ぐいっと肩を引かれる。
視界が揺れる。
気付くと私は誰かの胸の中にいた。


「……おはようございます」


私の身長より頭一個分くらい高い位置から私を見下す、不機嫌そうな顔。

不機嫌そうな顔をしているのは、白樹一依(しらき いちい)。
確か高校2年生。


「部屋に戻れ」


冷たい声。

この人もあの人達と同じことを思っているのだろうか。


「わかりました」


白樹一依の手を振り払い、私は自分の部屋へと向かう。

自分の部屋って言うか、ただの病室だけど。


ここは、この辺で有名な病院の中の精神科。

強制的に一週間前、連れてこられた。

理由?
そんなの簡単。

私が人殺しだから。

ナイフで自分の両親を刺しちゃった。
手が滑っちゃったの。

でもね、ちゃんとした理由があるんだよ?