鈴がどうして急に『開花』なんて言い出したのかは分からないけど、彼の家の庭には色んな花が植えられているから、何か咲きそうなものがあったのかもしれない。

「お前、一人で帰るなよ。送ってってやるから」

「え、いいよ! 気をつかいすぎだって」

 もう子どもじゃないんだから。

「そんなに、ぼうっとしてたら電信柱に低い鼻ぶつけちまうぞ」

 鈴は、また意地悪を言う。
 
 人の鼻をぺちゃ呼ばわりするだけあって、鈴の鼻は高い。
 
 横顔のラインは男性的鋭角で、自分とは違う生き物のように見えた。

 
 何とはなしに鈴の顔を見ていると、始業のチャイムが鳴る。
 
 多郎ちゃんは、遅れずに教室につけたかな。