濃紺にシンプルな小波模様が描かれた布。

 それに包まれた弁当は、普段、香里が食べている弁当の、ゆうに二倍はあった。

「……多郎ちゃんのだ」

 鞄に入れたとき間違えたんだ。

 自分の犯した失態に、香里は頭を抱える。

「わたし、多郎ちゃんに届けてくる……」

 香里の小さな弁当で、育ち盛りの男子高生のお腹を満たせるとは思えない。

 それが人一倍、体の大きな多郎では尚更だ。

「俺は届ける必要ねぇと思うけど?」

智恵子の横から顔を出して、鈴が言う。

「え? どうして」

 多郎ちゃん、お腹壊したりしてた?