「香里もお弁当出したら?」

 いつまでも、ぼうっと座っている香里に呆れたのか、智恵子が言う。

「うん。そうでした、そうでした」

 ただでさえ食べるのが遅い香里だ。ぼんやりしていたら、昼休みが終わってしまう。

 香里が鞄の中から、お弁当の包みを取り出すと、鈴と智恵子が妙な顔をした。

「え、どうしたの?」

 その視線の理由が分からずに、香里はおどおどと、二人に顔を振り向ける。

「随分、でかい弁当だな」

「包みも可愛い布じゃないんだけど、趣味変わった?」

 言われて、やっと香里は取り出した弁当に目を落とした。