「お前ら、いい加減にしろ」

 出席簿が唸り、言い争う二人の頭を襲う。

 言わずもがな、朝蜘であった。

「暴力教師……」

「何か言ったか、蜂須賀。館花も、もっと強く言ってやりなさい」

 頭部をさすっている鈴へ二撃目を加えた朝蜘は、香里に向き直る。

 鈴のせいで怒られてしまったと、こっそり香里は鈴に、非難の視線を送った。

「麝香も、蜂須賀と仲良くしてやるように言った筈だが?」

「それ、俺が友達いないみたいなんで、止めてもらえますか」

 可哀想な人みたいな扱いを受けた鈴の情けない抗議に、香里は吹き出す。

 一日ぶりの学校の空気は、香里によく馴染んだ。

 何笑ってんだよ、と言いながらも、鈴が怒っていないのは明らかである。すべてが心地よかった。

 これが、ずっと続くのだと思っていた。