はしゃいで、ふらふらと車道に……ああ、自分のことながら馬鹿としか思えない。

 痛みよりも驚きで泣きじゃくっている香里に、多郎は物凄い勢いで駆け寄ってきて、死なないで、と痣しかない相手に泣き叫んだのだった。

 あまりの迫力に涙も止まった。

「あれ? 多郎ちゃんて、いつサッカーやめたの?」

 ふと考えてみると、今、多郎は帰宅部だ。確か、中学のときも。

 結構、熱心に練習していたように見えたが、いつやめてしまったのだろう。

「さあ、そんな子どもの時のこと、覚えてないよ」

 困ったように笑う多郎に、香里は首をかしげた。

 そんなものだろうか。思い出せば思い出すほど、あのときの多郎はサッカーが好きで、いつもボールを持ち歩いていたほどだったのに。

「姉さんは、スポーツとかしないの」

「やめてよ、わたしの運動神経が壊滅的なの知ってるじゃない」

 本当に嫌そうな顔をする香里に、多郎は笑い出して、この話は有耶無耶になってしまった。