二人で道を歩くと、多郎は必ず、香里を庇うように車道の方を歩いた。

 小学校の時に香里が車にはねられたのを、未だに覚えているのかも知れない。

 大した怪我じゃなかったんだけど、と香里は心中呟いて、ちらりと多郎を見る。

 やはり、実際は、ほとんど車が通ることのない車道側を歩いていた。

「どうかした?」

 気分でも悪くなったのか、という目で見られて、香里は慌てる。

「いや、別に、車にはねられたときのこと思い出しただけ」

 はねられたというか、少しぶつかっただけなのだ。痣にしかならなかった。

「ああ、あの時ね。心臓止まるかと思った」

「多郎ちゃん、血相変えて病院に飛び込んで来たものね」

 土の着いたサッカーのユニフォームのまま、姉さん、と走り込んで来たのを今も覚えている。

 そう言えば、あの日は、サッカークラブの試合の日で、自分は応援に行こうとしてたのだっけ。