「じゃあ、一緒に行くから。早く朝飯食べて」

 姉さんの大丈夫は当てにならない、と文句を言いながら多郎は香里を台所へ促す。

 味噌汁の匂いがした。

 あら、もう大丈夫なの、と母親が多郎と同じようなことを尋ねる。

 母の話に、うん、うん、と生返事を繰り返しながら、香里は白飯を口に運んだ。心配性の母に付き合っていては日が暮れてしまう。

 テーブルの上に、多郎と自分の分の弁当が置いてあったので、それぞれの鞄に詰める。

「じゃあ、お母さん、わたし行くね」

 今日一日くらい休んだら、という母の過保護な言葉に、平気だから、と慌てて家を出た。

 ぐずぐずしていたら、本当に休まされないからだ。

「姉さん、ちゃんとよく噛んで食べた?」

 玄関で待ってくれていた多郎の言葉に、香里はぐったりしてしまった。

 過保護だよなぁ、これは……。