翌朝、体を起こすと、だるさはなく調子がいいほどだった。
香里は大きく伸びをしてから、制服に着がえ始める。
リボンも何もない、飾り気のない紺地のブレザーに身を包むと気持ちが引き締まるのを感じた。
今日は何曜日だったかな、教科書準備しなくちゃ。
一日寝ていただけなのに曜日感覚があやふやになっている自分を、香里は少し情けなく思う。
「姉さん、もう大丈夫なのか? もう一日くらい、休んだらいいのに」
時間割と、にらめっこしている香里を見咎めて、多郎は気遣わしげな声を掛けた。
「大丈夫よ。いつもより体が軽く思えるくらい」
嘘を言ったのではない。
事実、普段より、体が思う通りに動く気がする。
今まで感じていた、脳内イメージと身体の動きのラグが小さくなったような感覚だ。