鈴は子供のときから口は悪いけど面倒見がよくて、みんなの兄貴分だった。

 香里は幼い時分、家族を除いたら、鈴としか遊んだ記憶がない。

 鈍臭い香里を遊びの輪から外さないでいてくれたのは、情けないことながら鈴と弟ぐらいだったのである。

「相変わらず、とろくさいな。お前は。風邪でも、もらってきたか」

「そんなことないよ。多郎ちゃんが大袈裟なだけだよ」

 多郎は鈴に頭を下げると、ぐずぐずしてたら遅刻するとばかりにいなくなってしまった。

 一年生の教室は最上階だから、無理もない。