迷惑を掛けるのは、いつもわたしなのに。

「わたし、どのくらい寝てたの?」

 寝すぎたとき特有の、体の気怠さがあった。

「昨日、早退して……今は昼だ」

 だとすると、丸一日寝ていたことになる。

「だけど、姉さんの気にすることじゃない。姉さんは、熱出しただけだから」

 熱、と香里がおうむ返しに答えると、そうだ、と多郎は力強く頷いた。

「最近、ずっと調子が悪かったろう。姉さん、風邪をひいてたんだよ」

 そうなのだろうか。

 昨日の出来事は、わたしが熱に浮かされて見た夢のようなものだったのだろうか。

 空気を入れ換えよう、と多郎が庭に面した襖障子を開く。

 昼の光の眩しさに、香里は目を細めた。