「蜂須賀は、このまま館花を保健室へ連れて行きなさい」

 泣きじゃくる香里の背をさすり、なだめていた朝蜘が視線を上げて言った。

「あ、ああ……先生は?」

 二人のやり取りを呆然と見つめていた鈴が、現実に戻ってきたような顔で尋ねる。

「館花の弟を呼んでくる。今日は、もう早退しなさい」

 香里は、もう大丈夫だと言いたかったが、言えなかった。

 混乱していて、怖くて、ただただ疲れていた。