ああ、この大切な花を育てる水を俺が持っていないなら。


水をあげてくれるアンタに渡すべきだと分かっている。


「そろそろHRの時間だ、失礼する」


 投げつけた鞄を押しつけるように返されて、鈴目は動けないでいた。

あの幼なじみが朝蜘の花嫁になったのを体が理解していく。

そのむごい現実に、ただ、放心していた。