わたし、本当に風邪でも拾ってきちゃったのかな。

 いつの間にか、視界は霞に覆われて、ちかちかと明滅を繰り返していた。

「こ……それ……お……」

 先生の声も途切れ途切れになって。
 
 あれ、先生の背後に木が見える。

 しかも、ただの木じゃない。見たこともないような、苔生した立派な木。

 いや、背後じゃなくて、先生と重なって見える。

 香里は自分の目が恐ろしくなってきた。

 だって、こんなにはっきり幻覚が見えるなんて。