ああ、そうか。

私、多郎ちゃんを騙して家を出たんだっけ。

怒っているらしい多郎に、謝りたい気持ちもあるが、今はそれどころじゃなかった。

「多郎ちゃん、鈴は無事!? ここは、どこなの?」

 説教をする前に問われて、多郎は驚いた顔をする。

すぐに返らない答えに、不安が増した。

「鈴は……っ」


「蜂須賀、いつまで寝ている。花のむすめが、お呼びだ」


 むぎゅっ。