香里は飛び起きて、震えた。

どうして、あの場面で眠りに落ちることなど出来たんだろう。


鈴は、あんなに血を流して……ああ、鈴!


「鈴……! 何処にいるの?」

 見知らぬ部屋で、香里は不安に叫ぶ。

自分がマヌケに寝こけている間に、とてつもなく恐ろしいことが起こったのではないかと怖くなる。

「姉さん、目が覚めたのか……!」

 勢いよく開け放たれた襖から顔を出したのは、多郎だった。

多郎は、大股で香里の横たわる布団に歩みよる。

その表情は、厳しい。