香里の返事に、揚羽は口元へ笑みを灯す。

「じゃあ、香里って呼んでもいい?」

 当然のように机を香里の方へ寄せて囁く。

 戸惑う香里に、戸惑う必要なんてないよと言わんばかりに微笑む。
 
 香里は、その笑みを見ていられなくなって目を伏せた。

「だって、君にぴったりの名前だもの」



 凄く、美味しそうな匂いがする

「え?」

 何を言われたのか分からなくて、問い掛けようと振り向くと、揚羽は後ろの席の鈴に襟首を掴まれていた。

「揚羽くん、何なら俺が友達一号になってもいいぜ?」

「んー、あまり気が進まないな。僕、一人目の友達は香里って決めてたから」

 いつの間に、そんなこと決めていたんだろう……。