「多郎ちゃん……?」

 目が充血しているだけにしては、オーバーな反応ではないか。

香里は心配になって、多郎の目を確認せずにはいられなくなる。

「目、どうしたの?」

「どうもしない。普通の目だ」

 なら、隠す必要なんてない筈だ。

それなのに多郎は目の上から右手をどかそうとしない。

その手を除けて、香里は弟の目を見たいと思う。

何ともないなら、見て安心したい。

しかし、多郎の頭の位置は高すぎて、香里の手の介入を許さない。

(手が届かない……む、むかつく、昔は小さかったくせに!)

 そりゃ、誰でも昔は小さいだろう。