担任の朝蜘(あさくも)先生が教室に入ってくる。

 朝蜘先生は、銀縁の眼鏡のせいか、笑うことが少ないせいか、いつも不機嫌そうに見える。

 今日は、いつも以上に渋い顔をしていて怖い。何かあったんだろうか。

「転入生がきている」

 先生は教卓に出席簿を下ろすと、とても歓迎しているとは思えない口調で言った。

 転入生、というスペシャルな響きに教室の空気がざわざわと揺れる。

 こんな時期に転入生だなんて。

 どこの子だろう。

 小さな村だから、誰かが引っ越してきたって言うなら、すぐに噂になりそうなものだけど。

「ねえ、鈴、鈴は知ってた?」

「いや、聞いてないな」

 鈴は興味ない、って感じで机に突っ伏している。

 その子が美人の女の子だったら、そんな態度じゃいられないでしょと揶揄うと、ばーかと冷たくあしらわれた。