残暑が長引いたために例年より少し遅れて、山は色づきはじめた。
 
 すぐに本格的な冬が訪れて、みんな散ってしまうんだろう。

 そう考えると、香里(かおり)は悲しい気持ちにもなって、まだ先が黄色いだけの五葉を拾ってポケットに収める。

 栞にでもしよう。
 
 本を読むのは嫌いじゃない。
 
 とくに恋愛小説が好き。高校生といえば、まだまだ運命的な恋愛に憧れる年頃だ。
 
 まあ、この小さな村には他に娯楽がないから、というのもあるけど。