「簡単なことですよ。もう一度、組の傘下に加えていただきたいんです」


「…なん、だと?」


「神竜組を抜けてから、何だか上手くいかなくてねぇ。やっぱり、神竜組の力は絶大だと実感しましたよ。ですから、三代目から組長に上手く話をつけて欲しいんです」


「今更、何を…」



ハルの怒りが、私には手に取るように分かった。

権藤は、組の名を汚した裏切り者。
本当ならその場で消されても仕方がないのに、組長の温情で命を繋がれた。
その恩を忘れて、何て図々しい。

ギリリと奥歯を噛み締めると、不意に頬に何かを押し当てられた。

冷たい感覚。
それは、鋭く磨かれたナイフだった。


それを見て、ハルが息を飲む。


「断ることは、できませんよね?」