「危ないよ。」
澄んだ声を隣で聞いた。
耳障りだなんて言葉が絶対に不似合いな透明で滑らかな声。
まだ彼女は喋り続ける。
「君、噂の転校生でしょ?」
中学三年生の春、私は受験の関係で電車で一時間くらいの中学校に転入した。
「そうですけど。」
思ったよりもぶっきらぼうな口調になってしまったのを覚えてる。
「やっぱり。この道をそのまま歩いて行くと工事現場なの。だから今日みたいな雨の日はこっち側を通る方が身のためだよ。」
そう言って手を引く彼女の薬指には銀色の指輪が自分の存在をアピールするかのように光を放っていた。