いったい何をしているんだろう。
さっきまで遠くに聞こえていた運動部の掛け声も、いつの間にか空に吸い込まれてしまったように、静寂しきったグラウンドを残して消えた。
窓の向こうには夕日がもう西の彼方に隠れていて、深過ぎるほどの空がもう夜なのだと知らせている。
まだ終わらない。
ため息のついでに、額を机に預けた。
私がどんなに願っても、終わらせてくれない。
この山積みになった課題のプリントたちが。
「終わった?」
ふいに肩を軽く叩かれて、大袈裟と言う言葉がぴったりなほど大きく身を翻してしまった。
「残念ながら終わってません。早く終われってずっと願ってたのになぁ。」
言葉に思ったよりもたくさんの息が混じる。
「願っても課題は進みません。もう学校閉まるから。今日のところはそれを持ち帰って家で終わらせなさい。」
机の端に積み重なるプリントの山を指でなぞりながら、来年の6月に結婚式を挙げる裕美先生はそう告げた。