大扉から中に入ると、そこはかなり広い部屋だった。
前に大きなステージがあり、椅子がたくさん並べられている。

部屋に入った者から順に、その椅子に座るよう、案内された。


しばらくすると、会場内は人でいっぱいになっていた。
おそらく生徒なのだろう。

そしてステージに一人の男性が立った。

細身で背が高く、男性にしては少し長めの藍色の髪。
スーツを着崩したような格好をしている。
歳はソラと同じくらいに見える。


「みなさん、こんにちは。ではこれから説明会を行います。」


男性の声はここに来る時、最初に聞いた声と同じだった。
やはり、どこかで聞いたことのある声だ。
でもどこかは思い出せない…。


「ではまず、この施設での学習方法と生活の仕方について説明します。今から配る冊子を見てください。」


男性がそう言うと、掌くらいの小さな冊子が配られた。

「冊子ってなに?」
「…今時紙かよ…」
「電子手帳とかパソじゃなくて…?」
「なにこれ?どう見るの?」
「規則とかいらないし。」

周りからコソコソと話声が聞こえてきた。
ユイもソラに出逢っていなければ、きっと、今騒いでいる彼らと同じことを考えていただろう。

生まれて初めて見る紙の束。
どこにも¨本¨など存在しないのだから冊子を知らなくて当然。
もちろん、見方も解らなかったはずだ。
しかも今から行われることにも興味はなかっただろう。

ユイはステージにいる男性の声に耳を傾けた。