『…その¨ノアの箱舟計画¨が実行されていれば、皆さんは今頃ここでこうやって暮らしてはいませんでした。』
世界中の映像を見ていた人々も、プロジェクトチームの本部内も、真実を知らない全ての人が結衣の話に言葉を失った。
『けれど。それを知った研究者達は¨ノアの箱舟計画¨を力付くで止め…たくさんの命を護るために¨黒い星プロジェクト計画¨を強引に実行しました。…その為に哀しい犠牲もありました。』
その言葉に、一瞬鈴音の顔は曇る。
結樹はそれを見逃さず、コンピュータから一瞬手を離し、鈴音の頭を軽く小突く。
本来ならば、映像を取り戻そうと躍起になっている人達のお相手をし続けなければならないが、鈴音の曇った顔なんて結樹は見たくなかった。
『そして、今に至ります。』
最初は聴く耳を持たなかった人達も、真っ直ぐな瞳で話す結衣を見て、いつのまにか全ての人が話を聴いていた。
結衣の瞳には嘘がなく、聴きたいと思わせるような、不思議な力があった。
結衣はまた一つ深呼吸をしてゆっくりと言葉を紡いだ。
『皆さんはどう想いますか?』