戸惑う奏空に結衣は話を続けていく。

「…反対の人達と話し合いなんて出来ない事も、危険な事も解るの。でもね?お互いにちゃんと話をしたことなんてないでしょう?」

「…そうだとは思うけど…。」

結衣の言っていることは正しい。
…正しいのだが、そもそも話し合いが出来るくらいなら、テロなんて存在しない。
話し合いも出来ず、解り合えないからこそ、争いは起きるのだ。

「結衣ちゃん、話し合いは…「解ってる。だから私、架け橋を作りたいの。」

「………。」

奏空の言葉は結衣に遮られた。

もちろん、結衣も奏空の言いたい事が解らないわけではないだろう。
けれど結衣の瞳はもう決めていた。
こんな時の結衣は何を言っても聞かない事を奏空は知っている。

「……解った。でも一つだけ約束して?」

「約束…?」

「うん。危ないことはしないって約束。」

奏空は結衣が心配だった。

危ないことはしない…なんて、これからすることを考えれば無理な約束に決まっている。
解っていても結衣に危険な事はさせたくなかった。

結衣に奏空の想いが伝わったのか、その約束にコクンッと頷いた。