「奏空、久しぶり。」
結衣は笑顔で奏空を見た。
奏空と結衣はあれ以来、顔を合わせていない。
結衣のプロジェクトはまだプログラムがあり、奏空は心配でたびたび様子を見ていたが、結衣はそれも知らないだろう。
「…うん。久しぶり。」
様子を見てはいたが、話すことは久しぶりだった。
奏空は少し照れながら結衣に答えた。
結衣はまた笑顔を見せた…かと思うと、急に俯き呟いた。
「…星の部屋に勝手に入ってごめんなさい。」
「大丈夫。」
奏空もまた笑顔を見せ、結衣の頭をぽんぽんっと撫でる。
「だけどどうやって入ったの?鍵、かけてあったでしょ?」
奏空は俯く結衣に顔を覗かせ、問い掛ける。
結衣は奏空を見て小さな声で答えた。
「…うん。鍵はね…解いたの。」
「……解いた???」
「…うん。」
(…解けるはずがない。)
奏空は言葉を無くした。
結衣は嘘をつく女の子ではない。
奏空はよく知っている。
けれど、結衣が解いたというのは信じられなかった。