「こっち。」
そう言って奏は暗い夢の中を進み始めた。
(…どこまで行くんだろう?)
奏はどんどん暗闇へ向かっていく。
けれど、結衣は怖くなかった。
¨星のかけら¨が『大丈夫だよ』と囁いている、そんな気がしていた。
しばらく夢の中を移動すると奏は急に止まり、結衣を見た。
「ところで、あなたはこの夢の世界誰が作ったか知ってる?」
「奏空じゃないの…?」
奏の急な問い掛けに結衣は首を傾げた。
プログラム部の室長として結衣達被験者に話をする為に出てきたのは奏空だった。
結衣は当然このプログラムも夢も、奏空が作ったものだと思っていた。
「違うの。作ったのは私達のお母さんなの。」
嬉しそうに笑顔でそう言う奏に対し、結衣はまた首を傾げる。
作ったのは奏空では無いということよりも、解らないことがある。
「私達…?」
私達と言うことは少なくともあと一人はいるのだろう。
奏空も結樹も何も言っていなかった。
結衣にはもう一人が思い当たらなかった。