「うん、分かってる」
良い人だって、ちゃんと分かってる。
――――――
「姫嘉ちゃん、帰ろうか」
学活終了後、教科書を鞄に詰めている私に、恵介君が声をかける。
「え、一緒に?」
思わず、手に持っていた教科書を落としてしまった。
「あー…嫌かな?」
恵介君は苦笑いしながら落ちた教科書を拾う。
私も慌てて、床にばら撒かれた分厚い教科書に手を伸ばす。
私達はしゃがんだ状態で、向かい合うように目が合う。
「嫌じゃないよ、全然!…ただ、ちょっとビックリしちゃって」
「良かった、断られちゃったら司に合わす顔がないよ」
恵介君は拾った教科書を私に渡しながら、また苦笑いをした。
「司?」
「うん、実はさ…今日、司たち姫嘉ちゃんと一緒に帰れないだろ?だから代わりに護衛しろって」
「護衛!?」
そんな大袈裟な…、一人で帰れるのに。