ガシャンッ───

大きな大きな音がした。
焦りながら学校から出た。

はあはあと息を漏らしつつ、コンビニまで走った。
もう大丈夫だろう、とほっと胸をなでおろす。
ゆっくりと、家の道へ進んだ。


ガチャ…


「ただいま。」

お帰り、という返答はない。
鏡の前でドップリと化粧をつける母を見て、またかとため息をついた。
最近、母はホストクラブにはまっている。
ただでさえ、お金がないにもかかわらず、毎日欠かさず家を出ている。

「…行ってらっしゃい。」

大きな声で言っても、母は振り向かなかった。
最近、家庭の話もせず、そして挨拶もせず。
「お帰りってちゃんと言いなさい。」
なんて言ってた母が懐かしく思える。

机の上に置いてあったカップヌードル。
母は殴り書きで「お湯はポット」と書かれてある。
今日の夜も、カップヌードルを食べた。