「あ、愛莉、遅かったじゃん。」

朝、教室に入って初めに話しかけてきたのは由香だった。

「もう昼休みだよ?なにやってたの。」

髪の毛をとかしながら由香は言う。

「ちょっときて。」

「は?えっ!?ま、待ってよ。」

無理矢理誰もいない屋上の階段のところに由香を強引に引っ張った。

ここは本当に誰も来ない。

正志と健が時々ここに集まる場所だからだ。

正志と健はとにかく全生徒からビビられている。

健は昔から喧嘩が強かった。年上だろうがなんだろうが負けたことがない。
健に目をつけられたら最後だとみんな思ってる。

正志はみかけは結構普通だが、キレるともの凄く怖い。中1の頃学校のガラスをわりまくったことがあって、それからさらに恐れられるようになった。それに身長が高く、存在感がある。

そんな二人が中学に入ってくっついてしまったのだ。
ビビらないわけがない。

健と小学校の頃仲が良かった由香と私も怖がられるようになった。

だからこの中学で唯一由香がビビらないで話してくれて、そして相談できる相手だった。