ママはいつもベッドの上で、私を包む様にして本を読んでくれた。ママは時折、私と目が合うとそのたびに微笑んでくれた。
ママは白い肌の持ち主で、綺麗な人だった。清楚に笑う人で私は彼女をママ以前に「完璧な女性」として密かに憧れていたのを覚えてる。なにもかもが完璧だった。
─でも、彼女には危うい部分があった。
ある日、私は庭にいっぱいに植えたチューリップに、水を与えていたらママに声をかけられた。
「ねぇ、桃花ちゃん」
「なぁに?」
「ママはどうしたら幸せになれるのかな?」
ママは壊れてしまいそうな表情で、空を見上げた。私はママに抱きついた。不安だったんだ。このままどこかに消えてしまうんぢゃないか…そんな気がして、いてもたってもいられなかった…
「桃花ちゃん、どうしたの?」
「ママ、桃が幸せにしてあげる」
置いていかれたくない
「幸せにしてあげるから」
置いていかれたくないの…
ママは私を抱き締めた。キツく抱き締められた身体が少し苦しい…でもママの身体は凄く温かくて、ちゃんと“ここ”にいることを確認できたから、涙が出るほど安心できたんだ。