しばらくの沈黙…。
なんだか雰囲気に呑まれて益々熱がこもる。

だからと言って、逃げるワケにもいかない。
真里を置いてくなんて事、出来ない。


「……。」

「………。」

何か…何か言わなきゃ…っ


「あのッ、…」
思い切って顔を上げた。
何か言うワケでもなく。

あれ…?
こんな若い先生、この学校にいたっけ…


しかも、どことなく似ている。

泰智お兄ちゃんに…――

この人が新米先生と気づくまでに時間はかからなかった。

心臓が跳ねる。
こんな気持ち、久しぶり…


あたしは思わず凝視した。
でも向こうはきっと、あたしを知らない。
小学3年生だった子供が、今では高校2年。

ずいぶん変わった。と思う…


確信した。
この人は泰智お兄ちゃんだ…


「…ん?君、名前は?」
先生が顎に手を当てて覗き込んできた。

もしかしたら、あたしの名前さえも忘れているかもしれない。
迷わず答えた。

「津月…沙恵…」



覚えていませんように…。


そしたら、あたしの初恋は過去のモノになるから…――