ゆっくりバイクに歩み寄ると、彼の胸にヘルメットを突き出した。


「みんなが怖がってる 」


周りを横目で気にしながら、何故か後ろめたい気持ちになった。


「麻里也ちゃんも……俺が怖い? 」


その眼差しは、どこか寂しげだった。

そんなんじゃないけど……


少しうつむき加減になると、奏祐くんは何も言わずエンジンをかけた。


何だか気になって、ふと視線を上げる。

「じゃあな 」と少し気まずそうに言うと、バイクを走らせた。

周りを囲む生徒たちが道を開け、花道が出来上がると、その中を一気に突っ走っていった。




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