そのバスが出ていってまた静かになった。
空を見たら、本当に雲ひとつなかった。

なんてついているんだろうなぁ、と思う。

日頃の行いが良かったんだわ。
あんなに仕事頑張ってるもん。

空は水色で、縁の方が白っぽく光っているように見えた。

しばらすると、船着場の前のバス停に普通の路線バスも来た。
バス停で待つ中年の夫婦が乗って行く。

鳥が真っ直ぐな線を描くように飛んで行った。
のびのびと、空を横切って行く。

また心が静かになった。

だんだん、この緩い時間の過ぎ方が、手足の先の方から体の中心に染み込んで来るみたいだった。
私は両手を広げて大きく伸びをした。

やがてごとごと、と別のバスがやってきた。
砂利の上に止まる。

今度はホテルの方へ行ってくれるバスのようだ。
運転手に名前を言うと、宿泊客のリストで確認して、送迎用として無料で乗せてくれる。町ぐるみで協力し合って観光の仕事をしているのだな、と思った。

ネイチャーホテルは名前の通り自然の木々に囲まれた場所に建っていて、道路からちょっと奥に入ったところだった。

ここには日本で最南端の温泉がある。
水着で入る露天風呂もあって、午後の明るい太陽の下でたくさんの人達が楽しんでいた。

早速部屋に着くと、水着を持って温泉に行った。
今まで露天風呂に入る時といえば、冬。
それで外は寒くて、さぶっ、さぶっ、なんて言いながらばたばたっと湯船に小走りで入ったことしかなかったけれど、ここは外が暖かい。
建物から露天風呂に出る時、あせって小走りになんてならなくていい。
ゆっくり歩いて、湯船にぽちゃん。

余裕だ。

手足を伸ばす。
こんな暖かいところで露天風呂に入るのは初めてだ。

庭の中に湯船が点々とあったから、移動していろいろ入った。