｢あ、ちょっと待ってお兄！｣
美雪は立ち上がったが思考停止気味の上、動機が激しく、またソファに座り込んでしまった。



美雪の目は壁に掛けられた絵を見ていた。



……神様どうか、どうか、私の勘違いであって下さい。



お兄は結婚している、奥さんの尚子(なおこ) さんと4歳になる息子の健雄(たけお)君がいる……



美雪の目は見開かれ、顔面蒼白になっていた。



その時だった。



ガチャガチャ、バタンと玄関から勢いのある音がした後、｢ただいまー！｣と女性の声と小さい男の子の声が聞こえた。



タッタッタッタと軽快な足音がドア前まで聞こえたかと思うと勢いよくドアが開かれ、幼稚園の制服を来た健雄が入って来た。



｢あー、美雪姉だ！ただいまー！｣
健雄は元気一杯に挨拶した。



すぐ後ろには両手にスーパーのビニール袋を持った尚子が笑顔で立っていた。