「あ!」
頭の中に何か浮かんだ気がした、しかし、またもその尻尾を捕まえることが出来ず、目の前にスペアリブが出来つつあるという事実だけが残った。



「ちょっと待って」
美雪は自分自身に言い聞かせた。



右手に持っていた落とし蓋を鍋に戻し、リビングへと向かった。



リビングに来ると合成革張りと思われる黒い三人掛けのソファに腰をおろした。



美雪の目はリビング全体を見回していた。



ソファの正面には32型以上はある黒い液晶テレビが同じく黒いテレビ台に、圧倒的存在感で鎮座していた。


というのも、リビングにはほとんど物がなく、目につく物といえば、黒いカーテン、ソファとテレビの間にある白い楕円形のコーヒーテーブル、白い壁に掛けられている白い額縁に納められた絵画だけだった。



リビングはシンプルな白黒の世界を形成していた。