ああ!美味しそうな匂い。



自然と喜びの笑みが美雪の顔に現れた。



そして、美雪の目はこの匂いの元を捉えていた。



美雪はカップをそっとシンクへ置くと、匂いの元へと意識を集中した。



クッキングヒーターに、二、三歳くらいの子供ならすっぽり入ってしまうような寸胴鍋が、弱火でかけられていた。



美雪の脳は記憶を順に辿っていた。



……あれ?これって私が作ってたのかな?



……あれ?



美雪には料理をしていた記憶がまるでなかった。