そんなモヤモヤ・イライラを募らせたまま迎えた次の日の朝。
寝不足のせいで化粧のりは悪いし、動悸・息切れがひどくて体はだるいし、とにかく全てが絶不調のまま配達に出かけた。
今日はなるべく早く終わらせたいな……
そんな気持ちが通じたのか、あのお喋りな売店のおばちゃん−−田中さんは接客中で、さして呼び止められることもなかった。
そして私が昔好きだった人−−恭ちゃんの姿も西高には見当たらなかった。
おかげで午前中最後の配達先である湧高に着いたのは正午過ぎで。
さすがに4時間目真っ只中の校舎は、不気味なほど静かで、昨日とは全く状況が違っていた。
「こんにちは〜、しのはらベーカリーで〜す」
「あーはいはい。ちょっと今手が離せないから先に並べといてくれる?」
遠慮がちに声を掛けると、売店の裏にある倉庫からここの主−−春日さんの声がして、
ちっ、しゃーねぇな。
昨日のこともあって、私は言われた通り大人しくパンを並べる。
「……最後にコロッケパンがここっと。
よっし、春日さーん、伝票にサインお願いしますって……何やってんですか!?」
てっきり在庫整理でもやってるんだろうと思って開けたドアの向こうに、鏡片手にグロスをこれでもかってくらい塗り付けてる最中の春日さんを見つけて、私はドアを開けたまま固まった。
「あら…、ごめんなさいね?
化粧直ししてたら夢中になっちゃって」
私を振り返った春日さんは、そう言って悪びれることなくグロスをテカらせながらニッコリ笑う。
………っつうか、油まみれのタラコみたいだし、その口!
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