啓が黙って抱き寄せてくれた。
ありがとう
いつも側で守ってくれて
ありがとう
「君たち!大丈夫か!?」
1人の警官が駆けつけてきた。
「はい」
啓はしっかりとした口調で返事をして、私の肩を抱いたまま、ゆっくり移動した。
「2人とも大丈夫!?」
聡くんが駆け寄ってきた。
「…ぁ…ぅん」
あれ?
自分が思ってた以上に声が小さくて驚いた。
「もう一人…逃げちゃったね」
聡くんが啓の様子を伺いながら言う。
「ああ」
それからしばらく警察官に話を聞かれた。
最近、このあたりで暴行事件が多発していて、さっきの人もそのグループの1人だったらしい。
「昼間から行動するなんて、警察もなめられたもんだ。」
その警察官は眉間にシワをよせて言った。
…グループって…何人もいるん?
考えただけで吐き気が襲ってくる。
さっきの手が自分に触れていたらと思うだけで、怖くなって…
「美緒、大丈夫か?」
啓がすかさず背中を擦ってくれる。
…?
そういえば、さっき街中で都ちゃんを探していた時にぶつかった人たちも、こんな感じの事を言ってた気がする。