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「あ!?」
走ってきた足音に気づいたのか、1人の男の人の声がした。
着いた場所は建物の影で隠れた所で人が通らなさそうな場所。
目の前には気を失った女性が1人、車へ2人の男に入れられるところで、さすがに普通にはして居られないだろう。
女の人の口にはガムテープが貼ってある。
私は怖くなって声が出なくなった。
「おい、お前ら!何しとんじゃ!!」
け、啓…巻き舌になってる。
「こ、こいつら最近暴力騒動起こしてる奴らだ…」
聡くんは男2人に詰め寄る啓とは反対に、私より後ろにいる。
そんな頼りない聡くんを見たせいか、やっとの事で声が出た。
「何…してるんですか」
「うるせーなっ!おい、ついでにこの女も連れてけ!こいつよりかは美人だからな」
車に連れ込もうとしていたもう1人の人が
私に近寄ってきた。
いや…来んといてや。
「ひっ…」
私に向かって伸びてくる手。
思わず恐怖の声が漏れた。
「俺の存在無視ってんなよ」
耳元で聞こえた声に、恐怖も安堵も感じないまま私は停止した。
私の目の前で男の人の顔が啓の手によって潰れた。
「けい…」
「……」
何も喋らない…
本気で…キレてる。
「…こ、こわ」
私の隣で聡くんが言った。
「な、ガリガリの癖になんつう威力なんだよ!」
殴られていない方がビビったように叫んだ。
「………」
啓は黙ったまま叫んだ方に近付いていった。