「もしもし!?啓!?」




自分でも驚くほど早く反応して、通話ボタンを押した。



《美緒!…うぁっ、止めろや。近寄んな!》



むっ…


電話の向こうで都ちゃんと啓のやり取りが聞こえる。



黙って聞いていると、横からスルリと手が伸びてきて、携帯を取られた。






「えっ…聡くん?」



ビックリしたけど、それよりもっとビックリしたのは

聡くんがこれまでにないくらい真っ青だということだった。




やば…病気やん。







「啓さん。都に代わってくれませんか?…はい、はい。そうなんです…」




啓の声は聞こえないが、相手が都ちゃんに代わった事は、聡くんの表情から読み取れた。






「っ!?何で?ちょっと、ミヤ!!」






聞いたこともないくらい大きな声を出した後の聡くんは、ため息混じりに、右手に持っていた私の携帯を閉じた。





一方的に切られたんか…。







追いかけても、逃げられるんじゃ、きりがない。



「ね、聡くん。都ちゃんが逃げる理由、教えて。」


「…。」


聡くんは少し寂しげな顔をした。




「あっ、言いたくないなら、いいねんけどさ。啓と私で協力すれば、なんとかなるかなっ…て。」




私の目を見た聡くんは少し迷った後、静かに頷いた。



「いいよ。話すよ。」



その聡くんの話しは2年前にさかのぼった。