「まさかの2人きり」

「…啓、やけにご機嫌やな。」

「そりゃな。」


そう言いながら2人で並んで歩いていると…



「お、あそこの人だかり何や?」

啓が指差した先には何かの撮影が行われているようだった。


「なんやろ?見に行かへん?」

「おう!行こ。」


啓に手を引っ張られて近寄る。

とっさのことで啓は気づいていないけど、繋がれた手に私は心臓が跳ね上がった。


…こんなナチュラルに繋がれるとなんかドキドキするやん…。


「あー、なんかモデルさんみたいなん居るから、雑誌の撮影ちゃうか?」

「え!?うそやん!見たい!!」


が、私達の前には若い男の人達がいて、見えなかった。

頑張ってつま先立ちしながら見ようとしていると


「美緒、こっちこい。」

と、啓が腕を引っ張って見えやすいところまでつれてきてくれた。


「こっちのが見やすいやろ?」

「うん!ありがとう。」

「うっ…。」




突然啓がうなりだした。


「ど、どしたん!?」


「美緒可愛すぎ…。」

「へっ…?」


何!?いきなり?

突然のことでモデルの撮影に興味がいくまえにドキドキ状態。



「あー…、後で誰もいないとこ行こ。」

「も、もう…。」



そうそう見れない啓の仕草にドキドキしながらも、私たちは目を合わせて笑った。


「撮影終了ー。」

マネージャーみたいな人がモデルさんに言う。

その声を聞きながら周りで見ていた一般の人は、モデルさんを取り囲み始めた。

ドン!


「うわっ…。」

押し寄せる人混みに巻き込まれて、啓と繋いでいた手が離れてしまった。


「あ、美緒っ!」

名前を呼ばれるけど、どこにいるかわからない。


うそ〜…
すごい人気やなぁ。



って!
感心してる場合やないか。
ようやく人だかりから逃れられたと思って啓を探すが…



あれ?

見当たらへん…。
何処いったんやろ…?