……私は思ったんだ。

あの病室で。


あなたの亡骸を目の前にしても……残酷ですね、確かに哀しさはこみ上げてくるのに涙が出なかったのです。



先生はもう昔の姿ではなくて……でもどこか先生で……。



そんなあなたの介護をしていた夫人の素直な想いに瞳が潤んだ。

あなたと夫人の年の差を考えても、こういう結果になるのは当たり前にわかっていたはず。

でも、夫人はあなたとの間に新し命を設けて育てることを決意した。

それは愛故。

―――あの頃の私は、いえ、私たちにはその“愛”も“勇気”もなかったんじゃないんですか?


おかしいものです。

もしも、祐樹の余命があと一年だとしたら……私は寧ろ……

あなたの奥さまと一緒で……子供が欲しい。