「監督は俺に才能があるって言ってくれたんだ。俺の成長次第では、U-18の大会に招集したいとも言ってくれた」


それ以上聞きたくない。喉の奥が苦しい。
耳を塞ぎたくなった。


「でも、それには今のままじゃダメなことぐらい俺にも分かる」


目頭が熱い。
視界に映る悠太が涙でゆがんだ。


「だから……ロンドンに行くの?」


声が震えた。
違うよって言って。
この町にいるに決まってるだろって言って笑って。


「うん」


まっすぐな目で悠太が答えた。

小さい頃から見てきた目だ。

悠太はいつも、自分の進むべき道をひとりで決める。
誰かに流されたりしない。

だから、ここで止める事が無意味なことぐらい百も千も万も承知だ。
それでも――言いたいことが山ほどある。


胸が痛い……。


胃がタオルみたいにぎゅうっと絞られる。
泣いたらだめ。絶対にだめだ。
涙がこぼれないように、下唇を思いっきり噛んだ。


――行かないで。
そんな遠い所……行かないで。
嫌だ……行っちゃ嫌だ。




私……悠太が好きなんだよ?