中学に入学すると、ふたりは当然の流れでサッカー部に入部した

ふたりが入部してしばらく経った頃、陸が「悠太の奴、すげぇ勢いで上手くなってる」と悔しそうな表情で私にもらしたことがある。

その陸の言葉が決して大袈裟じゃなかったと私が知るのは、中1の秋。

その日の隣町の中学との試合は今でも忘れられない。

足にボールが吸い付いているかのようなドリブルで相手選手を何人も抜き去る悠太の姿。

観戦していた親達の「おぉー!」というどよめき。

試合に勝ったにも関わらず、陸が見せた悔しそうな表情。

この頃から、陸は「サッカー選手になりたい」と言わなくなった。

どんなに努力をしても、天性の才能には敵わないと感じるようになったのかもしれない。

すごい選手がいるという噂を聞き付けた県外のサッカーの名門高からいくつも推薦の話があったのに、悠太は断り続けた。クラブユースからの誘いも「部活がやりたい」と一蹴した。

そして私達と一緒に、この町の高校へ進学したんだ。