陸が腕で顔を隠した。

私も、陸も、よく分かっている。

悠太に逢えるのは、これが最後。


本当に最後……。

自分の事なんかそっちのけで私達のことばかり気に掛けてくれる、優しい言葉も、笑顔も全部、最後。


「まだ、一緒に居たいよ……」


「また逢えるよ」


「本当に?」


「お前はしつけーなー」


涙声でつっこんだ陸が、涙を流しながら笑う。


「これ、1年半前と同じやりとりだ」


「本当だ」


私と悠太もつられて泣き笑いする。

悠太がロンドンへ旅立つ日と同じだ。


「じゃあ悠太約束して?あの時みたいに」


悠太が笑顔で頷く。


「約束だ。必ずいつかまた会おう」


あの日と同じように悠太が私たちの肩を抱き寄せた。


「志津、陸……泣くな! 笑え」


泣くなと言われたのに、更に涙が溢れる。


どうしてこんな時まで、悠太は……。



「俺は、お前等の笑顔が大好きだった」


悠太の声も震えている。