「なんでこんなとこに?」


「俺にもわからねぇよ」


私の質問に悠太が笑う。


「訳が分からないまま、とりあえず山を降りて、高校に繋がる石段に出たんだ」


「俺達と……再会した場所?」


「そう。あの時ちょうど石段を見上げてたら、学校から帰る梢子が降りてきたんだよ。何で自分がこんな所に居るのかは全く分かなかったけど、とにかく梢子の顔見たら懐かしくて。『梢子!』って駆け寄ったんだ」


その言葉にびっくりする。


「え。梢子に会ったの?」


「一方的に。だけどね」


「どういうこと?」


「梢子は、まるで俺が見えてないみたいに無視して、足早に石段を下っていったよ」


悠太が虚しそうに笑う。


「何だあいつって益々訳が分からなくなったよ。でも……その後にくるサッカー部の奴等も、誰も俺に気が付かなかった」


唾を呑み込んだ。手が震える。

徐々に話が見えてきた。

つまり、梢子やサッカー部の皆に悠太は……


「見え……なかったんだ……」