3人はおでこを合わせてばあちゃんの手を覗き込んだ。
「わっ、虫だぁ」
「おしりがぴかぴかしてるね」
ばあちゃんの手の中には1.5センチ程の真っ黒な虫が居た。お尻から黄色い光を発している。
「これはね、蛍」
「ほ・た・る」
その名前を記憶しようと、悠太がばあちゃんの言葉を繰り返した。
「昔はこの辺にもいっぱい居たんだけどねぇ」
「いまはいないの?」
陸が首を傾げる。
「最近は見ないねぇ……これも山の奥の川まで行って捕まえてきたのよ」
ばあちゃんが寂しそうな顔をした。
「蛍はね……」
ばあちゃんが幼い私たち3人に静かに語りだす。その声は霧の向こうに隠れてしまって聞こえない……。

あの時ばあちゃんが話してくれた話……なんだったっけ?
今となってはもう思い出せない。
でも、あの日の光は今でも覚えている……。
初めて見た蛍は今までに
見た事のない暖かい光を私たちに見せてくれた。